こんにちは、緑友会・新風の鬼木誠です。
私はちょうど一年前、平成15年の12月議会において、経済教育や金銭教育の必要性を訴えました。総論的な大枠でお話しましたので、聞いていてもいまひとつピンとこなかったかもしれません。そこで今回は更に具体的な取り組みに踏み込んで質問したいと思います。
今回お話するのは起業家教育と言われるものです。起業という字は業を起こすと書きます。これは、子どもに実際に起業の体験をさせること、つまり仕入れから販売までを自分達の力でやり遂げることにより、創造力や独立心を育むものです。フロンティアスピリットを重んじるアメリカで、アントレプレナーシップ(※起業家精神)を醸成するプログラムとして生まれました。その後この取り組みは海を渡り、イギリスで発展をとげました。失業率14%という不況にあえぐイギリスで、時の首相・マーガレット=サッチャーが「打開策をアメリカから学べ!」と導入しました。起業の推進は産業を生み、産業は雇用を生みました。全てがこの事業の賜というのは極論でありますが、サッチャーの構造改革もあり、イギリスの失業率は2%台まで下がったという歴史的経緯があります。政治と経済は別物ではないという良い例でもあり、通産省出身の麻生知事にもご理解いただけると大きく期待するものであります。
日本の起業事情を、皆さん、ご存じでしょうか? 起業とは商売を始めること、つまり開業ですが、日本の開業率は年々低下しています。アメリカの14%台に対し、日本は4%台と、先進国でも最低レベルの数字となっています。逆に日本の廃業率、つまり会社をたたんで商売を辞める率は年々増加しています。近年では廃業率が開業率を上回り、つぶれる会社のほうが多いという有様です。これでは経済が活性化するはずがありません。産業の育成やベンチャーの支援を積極的にすすめる麻生知事は、現在の日本の開業率低下の原因はどこにあり、どうすれば解決できるとお考えでしょうか?
廃業率の増加が不況によるものだとすれば、開業率の低下の原因は何でしょうか? 私は若者の独立心の低下、挑戦する意欲の低下によるものだと考えます。
それは教育の影響、社会の風潮からくるものかもしれません。先生は「いい学校にいきなさい」と教える、親は「安定した職につきなさい」と教える……。いい学校に行き、いい会社に入れば、いい人生がおくれる。そんな社会の風潮が、子どもから挑戦の気概を奪っていったのだと思います。そこには自分の人生をいかに生きるべきかという哲学が欠けています。
近年、働く意欲さえない若者「ニート」が社会問題となっています。子どもに働く意欲を与え、自分の人生はいかにあるべきかということを考えさせるプログラムが必要です。教育とは手取り足取り育ててやることではないと、私は考えます。自分で生き抜く力を身につけさせることが教育だと思います。働かなくても食っていける、そんな甘えた意識を捨てさせ、親はいつまでも食わせてはくれない、自分の力で生きていかなくてはならないということを教えなくてはなりません。
その第一歩としてたいへん効果を発揮しているのがこの起業家教育です。これからその具体的内容として、就業体験活動についてご説明したいと思います。対象者は義務教育の段階にある小中学生です。
まず舞台としては商店街の空き店舗を活用します。皆さん充分ご承知のように、現在商店街はどの商店街を見てもたいへんな状況です。大型ショッピングセンターの進出や、消費者ニーズの多様化によって、小さな街の商店街は大きな打撃を受けています。廃業による空き店舗が並んだ、いわゆる「シャッター商店街」も珍しくなくなってきつつあります。こうした現状をふまえて、これからの商店街のあり方について知事はいかがお考えでしょうか? やる気をなくした商店主に、大きな予算でハコ物を作っても無駄だという声もあります。真に活力が湧き起こるソフト事業が必要だと私は考えます。この事業は空き店舗を利用して、子どもに店を経営させるものです。
簡単に経営と言いましたが、経営とは何でしょうか? ここではお店ごっこのようなまねごとではなく、本格的な経営に挑みます。子ども達はチームごとにお店を持ち、社長や経理や営業といった役割分担をします。事業計画を作り、借り入れを起こし、自分で仕入れをし、販売をする。売り上げから経費を差し引いて利益が残り、借り入れを返済する。ここまでの一連の流れを全て子ども達の創意工夫でやり遂げるのです。もちろん本格的にやる以上、扱うお金は本物の現金です。
「えっ!子どもに現金を扱わせるの? しかも借り入れまでさせるなんて!」という非難の声が聞こえてくるようです。しかし、それでいいのです。子どもは本物に敏感です。興味があるときにこそ本物を与えるのです。リアルな体験でなければ現場の緊張感は伝わりません。「お金は汚いもの」そんな曲がった認識が大人の中にこそあるのではないでしょうか? きちんと計画をたててお金を借り、汗を流して働いてきちんと返す。こんな基本的なことですら、今まで誰も教えてくれなかったのです。
現場で一生懸命物を売るなかで、子ども達は働くことのたいへんさを知ります。お金を手にすることの価値を知ります。親がたいへんな思いをして自分を育ててくれていることを知ります。こうして働く人達がいて社会が成り立っていることを知ります。創意工夫と努力が実を結ぶことを知ります。いろんな職業に触れ、自分の適性や進路を考える契機になります。お客さんと接することで社会に触れ接客マナーを知ります。正解がない問題に自分で考え立ち向かうことを身につけます。仲間と役割を分担し、協力してひとつの目標に挑むことを覚えます。今学校で習っていることが社会でどのように役に立つのかを身をもって認識します。だからこそ、多感でもあり、基礎的な学習を行う義務教育の期間中にこそ、この事業をすべきだと、私は考えます。
面白いことにこの事業では、努力と工夫をしたチームが必ずと言っていいほど最も優秀な経営成績を残すそうです。商品の並べ方、お客さんの呼び込み方、仕入れる商品構成から価格の設定、ライバル店との差別化、子どもの持つアイディアは無限大です。
そこで教育長にお尋ねします。まずこうした起業家教育の必要性について、ご見解をお聞かせください。その中でも特に就業体験活動の教育的効果について、どのように認識しておられるかお答えください。最後に学校における就業体験活動の実施について、ご見解をお聞かせください。
独立心や創造力を持った子どもの育成は、アンビシャス運動を推進する麻生知事の方針にピッタリ合致するものと考えます。アントレプレナーシップを醸成する起業家教育の必要性について、知事のご見解をお聞かせください。また、この事業は若年者の職業観の涵養に大きく資するものであると私は考えますが、知事はこうした就業体験活動の価値をどのようにとらえるかお答えください。
福岡での例を挙げてみましょう。まず2001年に福岡市東区の箱崎商店街にて、起業体験プログラム「キッズマート」が開催されました。福岡市立箱崎小学校、箱崎商店連合会、福岡市、九州大学ベンチャービジネスラボラトリーなどの協力を得て、大成功を納めました。この事業は経済産業省中小企業庁の調査研究対象として、2002年の中小企業白書に盛り込まれました。商店街は盛り上がり、子ども達はいきいきと働きました。学校も商店街も子ども達も、この事業の存続を希望しました。しかし、翌年以降、財政難を理由に福岡市の予算がつかず、残念ながらこの事業はこの年限りのものとなってしまいました。事業存続のためには、いくばくかの予算と、そして協力してくれる人手が必要ということが、ここでわかります。
逆にNPOが主体となって事業が存続している地域もあります。NPO法人・アクションタウン行橋が行っている、就業体験事業です。これは行橋の商店主らが、町おこしの一環として作ったものです。子ども達が新美夜古商店街の協力店舗でスタッフとして働くことで、就業意識を高め、自分の将来の進路を主体的に考える機会を与えています。たいへん好評で、地元のみならず北九州市からも中学生を受け入れています。子どもの事業を見に集まった親達が、行橋で採れたカニやシャコを買って帰るそうで、商店街の良いPRとなっています。来年度の受け入れも応募が殺到しており、あまりの盛況に嬉しい悲鳴をあげているのが現状です。
また宗像市では「日の里6丁目子ども会」の児童13人が仮想の会社を設立し、子ども祭りに出店しました。この事業は九州経済産業局が地域で試みている教育活動の一環ということです。教育活動でありながら経産局の事業であるところが興味深いところです。
就業体験学習は教育の側面だけでなく産業振興の側面があります。特に商店街の活性化に与える影響は見逃せません。子どもが動けば親が動きます。これはマーケティングの基本です。今まで来たこともなかった地元の商店街に、親がこぞって顔を出すわけです。親は消費者となり、子どもは地元商店街に愛着を持つ、そうした効果が見込まれます。もちろんこの事業は短期のものであり、この消費が永続するわけではないのですが、商店街が魅力を売り込むひとつのチャンスとなります。地元に根付き愛されることが商店街の生命線です。
また、子ども達の「いらっしゃい、いらっしゃい!」の大きな声、親たちも集まり賑わう光景が、商店主達の刺激となります。「自分達も負けてはいられない!」事業終了後の多くのアンケートで寄せられた感想です。この子ども達が「いつかは自分もここで店を持ちたい」と戻ってくるならば、後継者問題も解消されることでしょう。知事は、商店街活性化の起爆剤として、空き店舗を利用した子どもの出店事業をどうお考えになりますでしょうか?
以上、教育と産業振興の両面から起業家教育、なかでも就業体験事業について語ってきました。アンビシャスな子どもを育て、商店街を活性化させるという公的な意義があるこの事業は、行政がバックアップするだけの価値が充分あると考えますが、知事のご見解をお聞かせください。 リスクを恐れる大人が、子どもをアンビシャスに育てられるわけがありません。チャレンジする勇気と情熱を期待致しまして、私の一般質問を終了させていただきます。
ありがとうございました。